音制連20周年

2回にわたって「着ウタ」がCDシングルの代わりになっていることを書きました。
シングルがユーザー(リスナー)から「NO!」をつきつけられていると、私は勝手に判断しています。
(くりかえしますが、世の中の全ての人が、そう言っているわけではありません。念の為)
「着ウタ」はJ−POPやラップ系の曲にはむいていると思いますが、ロック・ソングライター系の曲にはあんまりむいてはいない。と書きました。
「着ウタ」は 曲を30秒前後のパーツに切り取って携帯サイトにアップします。
30秒のパーツを切り取ることに普通ミュージシャンはかかわっていません。
ミュージシャンは完成された一曲全部には大きな関心があるのですが、その楽曲の二次利用である「着ウタ」なんかにかかわったりしないもんです。
しかし「着ウタ」がCDシングルの代わりになちゃっているんだったら、ミュージシャンは本気で「着ウタ」にかかわらなければならないと思うのです。
ロック・シンガーソングライター系のミュージシャンは「着ウタ」の機能を使いきるんだ、と考えて欲しいのです。
実は「着ウタ」は47秒前後迄は良音質で収録可能です。
ですから「47秒という着ウタ」の「尺」のなかで、どれだけ「自分の音楽」を表現できるかをトライしてみて欲しいのです。
曲を作る時、ロック・シンガーロングライター系のアーティストは普通は長さの制約がありませんから、色々考えて比較的長い曲が出来上がります。
しかし、「着ウタ」という「尺」を使うということを前提とすると制作の自由は大きく損なわれます。
まあ普通は「そんなのイヤだよ! 僕は自由に作りたいんだ!」といいますよね。
でもね、考え直してください! 「47秒の完成された曲」を食べたくて、池の中で待っている魚が沢山いるんです。(笑)
自由であることは 色々工夫してしまうということになります。 そして何故か「長い曲」「むずかしい曲」が出来上がってしまいます。
工夫するということは、人間の持っている最高の美点の一つなのですが、工夫を重ねると本当の良さが消えてしまうという事実もあります。
このことを私は「着ウタはCDシングルの後継 その1」で詳しく書きましたから、ぜひもう一度読んでください。
本来 人間はいろんな活動を自由にやりたいと願うのが普通ですが、わざわざ制約を作って、その中で、最高の技術なり美を追求するという知的な楽しみ方もあることを知っています。
手を使用してはいけないというルールを作って、足だけでゲームをするというサッカーが世界中で大人気なのは その最たるものです。
日本の短歌や俳句だって同じようなものですよね。
五・七・五・七・七 とか 五・七・五 のなかに「恋の情熱」や「人生のはかなさ」などというあらゆる事象を表現しきってしまう、という技(ワザ)を昔から日本人は開発してきました。
「47秒という尺」の制約は、クリエーターにとって 挑戦のしがいのある制約だと思うのですが。(笑)
(つづく)    


ちょっと前、1月17日に 社団法人音楽制作者連盟 FMPの新年会がありました。 毎年正月の休み明け直ぐに、レコード協会の新年会、映像協会の新年会が開かれ、一週間程間を開けて 音事協の新年会と続き、最後に音制連の新年会が開かれます。
その間に 私のかかわっているコンピューターゲーム業界 CESAの新年会があるので、正月は結構スケジュールがたてこみます。(笑)
年末、わりと早目に休みに入れる レコード会社、映像系の会社、ゲーム業界の会社 が加盟している協会のえらい人たちは 正月が開けて直ちに 新年会を催しますが、「レコード大賞だ。」「紅白だ。」「カウントダウン・コンサートだ。」と年末ギリギリどころか 正月1日に 仕事が残ってしまう アーティストマネージメントを主たる業務にしている会社の加盟している協会のえらい人の正月休みは 1月2日以降になりますから、どうしても新年会は 1月の中旬になってしまうのです。
で、今年の音制連の新年会も 1月17日に開かれました。
音制連は 2006年10月1日に創立20周年を迎えたので、今年の新年会は節目の年の新年会 ということになります。
その節目に、音制連は2つの記念事業を実施しました。
一つは「音制連20年史」で もう一つが「音楽主義AWARD」です。

この「音楽主義AWARD」はなんなのか ということを説明するのは大変なので 音制連事業委員長 佐藤剛さんの発言を以下引用します。

大衆音楽の発展に貢献したり、寄与してきた方々のなさってきた仕事にスポットをあてて、敬意の念を払い、それらの仕事を音楽関係者だけでなく世のなか一般に、広く後世に伝えていこうというのが『音楽主義AWARD』のそもそもの主旨です。音制連というのはシンガーソングライターやバンドのパートナー(事務所)が中心で、もともと古い権威に反発している人たちが作ったというような側面もありますから、権威的なことはいらないという声もありますが、音制連20周年ということで、日本のポップスやロックがどういう人たちに支えられて成長してきたのが、長い間音楽の裏方をやってきた人たちにも励みになるよう、彼らにスポットをあてていきたい。小さくても心のある賞だと言われるように育っていければいいと考えています。l
そこで今回は何人に賞を差し上げるのか、私は複数の人に差し上げたいと提案します。 先日の第1回の選考会で19名の候補があがっていますが、大きく3つの分野を想定したいと思います。 ひとつは広義の意味での音楽制作、つまりプロデューサーやマネージャーなどアーティストを発見する、育てるというところを含めた音楽製作者。 2つめに音楽を創るうえで欠かせない技術者。レコーディングでいえばエンジニア、コンサートでいえば舞台監督や照明のプランナー、美術など。 3つめが、ライブ会場やCDショップ、メディアなど、音楽を世のなかに伝える人たち。 この3部門に分けたほうが考えやすいと思います。

という事で 第1回の受賞者は 大森昭男(CM音楽プロデューサー) 中村とうよう(音楽評論家) 平野悠(LOFT PROJECT 代表) 吉野金次(レコーディング・エンジンジニア/プロデューサー)の4名の方々と決まったわけです。
第1回の受賞者として まことに ふさわしい方たちです。
音楽関係者の誰もが 直接 あるいは 間接にでも お世話になったかたです。
音楽愛好家からも 賛成してもらえると この受賞者名簿をみておもいます。
「小さくても 心のある賞」にしたいという 佐藤剛さんの気持が 歴史を重ねるうちに 誰かに捻じ曲げられないで 長く続くことを いのります。