チョンミョンフンは凄い!!

渡辺晋、美佐さん話があまりに続いたので、前回の最後で続くと書きましたが、唐突に終わりにします。(笑) 

話は変わって・・・

指揮者 チョンミョンフン率いる東京フィルハーモニックオーケストラ(東フィル)が、アジアツアー(中国と韓国公演全7回) を終えて、締めくくりの公演をサントリーホールで開きました。

アジアツアーのなかで、アンサンブルがますます向上し、ショスタコヴィッチ交響曲5番は、チョンミョンフンの意図する、最弱音(PPP)が本当に美しく演奏され、最強音(fff)が効果的に聴こえるといういつもながら、いやいつも以上に素晴らしい演奏でした。

庄司紗矢香さんの弾く、チャイコフスキV協も、まれにみる立派な出来でした。

チョンミョンフンが東フィルに力を入れてくれることは前にも書きました。
彼の2人のお姉さんは、それぞれ世界的なチェリスト・チョンミョンファ、バイオリニスト・チョンキョンファで、日本でもたびたび演奏し人気があります。

この子供達を育てたお母さんが書いた本、 

『世界がお前達の舞台だ』 (チョン・ファミリー物語) 李元淑 イ・ウォンスク著  

を読むと、この一家のパワーに圧倒されます。

訳者、藤本敏和氏のあとがきにもありますが、1960年代当時のアジアの弱小国だった韓国の、少女バイオリ二スト、チョンキョンファが、第二次世界大戦後のクラシック音楽界を牛耳っていたユダヤ人勢力に立ち向かっていくところはすさまじい迫力です。

それにもかかわらず、その後、娘を妨害した、アイザックスターンの立場を、お母さん李元淑さんが、イスラエルという極めて不安定な国をもつユダヤと弱小国だった韓国を比べて、一定の理解を示すところがすごいのです。

一方で、お母さん李元淑の父親は有名な抗日運動家で、日本の植民地時代にひどい目にあうという経験をしています。

そのような背景があるにもかかわらず、チョンミョンフンが東フィルに力を入れ、アジアツアーに付き合ってくれていることは、最近の 日・中・韓の外交がギクシャクしている時に、深く心にしみます。

なんと心の広いファミリーなんだろう!・・・と。

コンサートは大興奮のうちに終わり、今日のコンサートの成果とアジアツアーの最終回をねぎらう意味を込めて、鳴り止まぬ拍手は、ステージから全ての楽団員が引き上げた後も続き、もう一度チョンミョンフンと、東フィル楽団員、
それに庄司沙矢香さんまで、出てきて挨拶をしました。

こんなに熱いステージは、クラシックの世界ではめったに見れません。是非一度、東フィルのコンサートを覗いてみてはいかがですか。

お勧めします。

世界がおまえたちの舞台だ―チョン・ファミリー物語

世界がおまえたちの舞台だ―チョン・ファミリー物語