レコード史 11

1982年にCDが初めて発売され、85年頃から急速に普及しました。 ビニール製の30cm LPは重いし、ほこりが付きやすいし、キズがすぐにつくし、取り扱うのにかなり神経を使います。
一方、新しくできたCDは軽くて、かなり乱暴に扱っても大丈夫でしたから、歓迎されました。 何よりもA,B面をひっくりかえさなくてもアルバム一枚全曲を連続演奏できるし、リモコンを使って好きな曲を手許で何度でも繰り返し聴くとこが可能になったのは30cm LPとの違いです。 1980年代の終わり頃、私も購入するレコードは全てCDになっていました。
・・・・・である時に、「自分はオリジナルCDをキチンと聴いてないな!」と気付きました。 それ迄の30cm LPだと、レコード音楽を聴く「集中力」が失われる頃、ちょうど片面5曲が終わるのです。 レコードプレーヤーのアームが盤面の中央の無音の「溝」をトレースしはじめると軽く「コツン、コツン、コツン」という音がスピーカーから聴こえてきます。 「オッ!」A面が終わったなと気付いて「プレーヤー」に近付いて、透明の「プレーヤー・ケース」のフタをあけて、30cm LPをターンテーブルから取り上げ、B面を表にし、クリーナーで軽く表面を拭いて、静かにレコードをターンテーブルに戻し、注意深くアームの先に装着してある針を再び30cm LPの外周の溝に下ろします。 期待通りのB面の1曲目がはじまります。 当時はごく当たり前に、こと一連の作業をやっていたのですが、今思うとこれが実に重要な時間だったのですネ。 レコードを製作するミュージシャンは、A面の終わりにふさわしい曲を意識し作り、2曲目、3曲目と並べ、A面の終わりにふさわしい曲を5曲目に収録し、ここでリスナーが30cm LPを裏返しにするから気分が変わるだろうから、B面の1曲目を「こうしよう」とか「ああしようとか」考え抜いて決めて、B面の5曲を構成して、1枚のLPを作りました。