一歩後退2歩前進

昨年の1月19日のブログで 作家で医者の加賀乙彦氏の 「19世紀リアリズムの復権の予感」 というエッセイを引用しました。
今日も再び引用したいとおもいます。
「ところで、今、21世紀になって小説の歴史を振り返ってみると、20世紀の文学はいったい何であったのかと、ちょっと嘆きにちかい感慨を覚える。
私が小説を書きはじめてからの40年間の文壇での経験でも、小説の評価は常に新しいことにあった。新しい技法、珍奇な文体、奇想天外な空想 変わった風俗描写が評価されてきた。
しかしその評価はすぐに崩れさるもので、その良い例が「アンチ・ロマン」であったろう。
従来の小説とは異質なもの、意表をつくものを作ろうと作家たちは必死に頭をしぼったのだが、その多くはすぐ古びてしまい、やがて忘れ去られてしまった。・・・・・・・・・」
これ以上 引用すると とても長くなるのでやめますが 小説 クラシック音楽 絵画といった 歴史の長いジャンルの作品が 20世紀にそろって混迷してしまった、と結論ずけていて、21世紀の作品は 19世紀と接合していくのではないか、と将来図を述べています。

歴史の長いアートの世界は 加賀乙彦氏のような考えかたもすでにでてきています。
私の関わっている 20世紀に生まれたポップスの世界も 同じように 何か 閉塞感があります。
小説の世界は いったん19世紀にもどって そこから再出発するのが将来図だと、加賀乙彦氏は述べているのですが ポップスの世界も 一度少し前に戻ったほうがいいのかもしれません。