逝きし世の面影 その1

徳川恒孝著「江戸の遺伝子」という本を前回紹介しました。
この本のなかで徳川氏が引用していた 渡辺京二著「逝きし世の面影」平凡ライブラリー が気になったので読みはじめたのですが、驚くべき立派な本だとわかりました。 600ページにも及ぶ大作なので 実はまだ読了したわけではありません。 途中なのです。
それにもかかわらず この本のことを書きたくなったのは、私の今のテーマ「当分新しいものがでてきそうにもないから江戸時代を勉強してみよう。」 にピッタリの本だったのです。
明治維新以降の日本の近代化は古い日本の制度や文物を乱暴に清算した上で建設されたことは、常識だけれど、この清算がひとつのユニークな文明(江戸文明)の滅亡を意味したのだということを 日本人が十分に自覚していない。」 と渡辺京二氏は書きはじめます。
日本人は ユニークな文明(江戸時代)を長い時間をかけて創りあげたのですが、そのなかで生活している日本人自身が「自分達の持っている文明がユニークなのだ」と自覚できなかったのはやむをえません。
「あいつは変わっているよな!」と他人を評価することがよくありますが、そういわれている当人は「自分は普通だと思っている」というのは ごく普通にあることです。
ですから 江戸文明が変わっている(ユニーク)と感じたのは、当然のことですが、日本人自身ではなくて外人だったわけです。
普通だと思っていることを日本人は記録しませんから、江戸文明についての記録は日本人によっては書かれていません。 ですから 私達日本人はいまとなっては 江戸文明についてはまったく知りようもないわけです。
しかし幕末から明治初期に来日した欧米人は 当時の日本の文明(江戸時代)が彼ら自身のそれとは あまりに異質なものであったために その特質を記述せずにはおれなかったので、彼等は記録として残してくれています。
渡辺京二氏は 夥しい数の欧米人によって書かれた「見聞記」「日記」「書簡集」「回想集」「随筆」等を(多分200人前後を越すとおもわれる外人の書いた資料)を 読みこなして再構築し、江戸文明を今の私達に紹介してくれています。(つづく)

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)