逝きし世の面影 その3

「逝きし世の面影」は14章から成立しています。
第一章は勿論 この本の全体のテーマを大きく呈示しています。
『文化は滅びないし、ある民族の特性も滅びはしない。 それはただ変容するだけだ。 滅びるのは文明である。 つまり歴史的個性としての生活総体のありようが 滅びるのである。』
つまり この本は江戸時代の後半から幕末のころの 「江戸文明」 を欧米人の見聞録を再構成して、 「滅びてしまった江戸文明の頃の日本人が どんな生活をしていたのか」 を再現しようという試みなのです。
で、第二章に入ります。 タイトルは 「陽気な人びと」 です。 つまり 「日本人は陽気だった。」 と外人は観察の結果 結論付けています。
初代駐日公使オールコックは 「日本人はいろいろな欠点をもっているとはいえ、幸福で気さくな、不満のない国民であるように思われる。」
黒船のペリーは 「人びとは幸福で満足そう。」
日英修好通商条約使節団のオズボーンは 「幸せで煩いから解放されているように見える。」
横浜・東京の水道設計技師ヘンリー・S・パーマは 「日本人は何か物珍しいものを見つけて じっと感心して眺めている時以外は 絶えず喋り続け、笑いこけている。」
フランス伯爵ボーヴォワルは 「この民族は笑い上戸で 心の底まで陽気である。」
スイス通商調査団団長リンダウは 「日本人ほど愉快になり易い人種は殆どあるまい。 良いにせよ悪いにせよ、どんな冗談でも笑いこける。 そして子供のように、笑い始めたとなると、理由もなく笑い続ける。」
ボーヴォワル 「日本人はいささか子供っぽいかも知れないが、親切と純粋、信頼にみちた民族だ。」
福井藩校や東京大学両校の教師グリフィスは 「日本人のように遊び好きといってよいような国民の間では、子供特有の娯楽と大人になってからの娯楽の間に、境界線を引くのは必ずしも容易ではない」
私達の先祖様達は どうも やたら陽気で明るかったようなのです。
この本を 読んでいると  「江戸時代は 専制幕府によって 庶民は苦しめられていた。」 ということでは なかったんじゃないかという気がします。
この本が あんまり面白いので もっとご紹介したくなるのですが このへんでやめときます。
是非お読み下さい。

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)

逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)