会社 その3

「何かの会社」を興そうと考える人は その「何か」をやってみたいと思うから会社を作るのだと思う。と昨日書きました。
会社が成熟期に入ると 「その何か」をやってみたいと思う当初の創業者の気持ちよりも
「その会社の内外の人達のありふれた勝手な期待」がどんどん大きくなって ついには 創業者や創業メンバーの考えていた方向とは まるで違った方向に暴走をはじめてしまいます。

でも、「会社の内外の人達のありふれた勝手な期待」というものが 「経済の一般常識」
とか「風潮」ですから そちら側から見ると 創業者や創業メンバーの考え方こそ
「常識外れ」で「間違っている」とされてしまいます。


再び 久世光彦に戻ります。
久世光彦の絶筆は「室内休刊」でした。
月刊誌「室内」という雑誌は 私が敬愛する山本夏彦が社長でした。山本夏彦は 会社を決して大きくしようとしませんでした。
あの安部譲二出世作「堀の中の懲りない面々」は「室内」に連載されていました。。
ですから これをまとめて出版する権利は山本夏彦が持っていたのですが 彼はこの権利を
喜んで出放したのです。

「何故なのか?」

安部譲二のコラムは「室内」で連載中から大評判だったので 一冊にまとめて出版すれば
ベストセラー間違いなしだと自分(山本夏彦)でも判っていた。
で、「室内」で発売すれば、そのあとで 発売予定の地味な本に対する「室内」社員の見方
が変わるのを恐れる。

たまたまのベストセラーが社の雰囲気を変えてしまうと そのあと 会社が立ち行かなく なるから、自分の社が持っている出版の権利を手放したのだ。」