表現の自由 VS 知的財産権 その5

今日でこの本からの引用はひとまず終わりにしますが、ガマンして読んでください。

著者のケンブリュー・マクロードは、90年代前半はレコード店で働いていました。そして、著作権に興味を持つ大学院生だったのです。

次のエピソードはそんな時期の話です。

 ある日デイブ・マシューズが店にやって来た。レジ越しに私(著者)が、なぜ曲のコピーや交換を認めるのかと尋ねると、彼は気楽な調子でこういった。「まあ君はレコード店に勤めているからね。でも友達のためにはミックステープを作るだろ?」
 「君は自分がいいやと思った曲や、友達が気になると思う曲を選ぶよね。そうやって曲に触れる機会がなければ、そのバンドのレコードを買う事もないでしょ?」。
 マシューズの発言はポイントを突いていた。
 「だから窃盗とは違うよ。コピーされたテープも、ちゃんと役目を果たしてる。僕らの音楽は主流のラジオでは流れないんだから、テープの貸し借りがなければ僕らのバンドはほとんど知名度がない。バンドを知らしめる手段だよ、テープが広まれば、売上げも増えるのさ」。
 デイブ・マシューズ・バンドの人気は九〇年代はうなぎのぼりで、インターネットではさらに容易にやり取りできるものとなった。それでもこのバンドは、「交換文化」(オンライン、オフラインにかかわらず)からのメリットを享受している。ファンとのつながりを維持するのに、交換は重要だからだ。