山口瞳さんのこと

先週、山本夏彦さんについて触れて、山口瞳さんのこともいずれ書きますといっていましたが、驚いたことに、日経の (日曜)23日付11ページに 『日記をのぞく』 というコラムがあって、山口瞳 『男性自身』4 というのを発見して、ビックリしました。
4ですから、既に1、2、3、が出ているはずです。

土、日の2日は沖縄に戻っていることが多くて、月曜日に東京に戻ってから、読んでいない古い新聞(たった1日前、2日前なのに)を見ることがめったにないので、今まで見逃していました。

直木賞受賞作の 『江分利満氏の優雅な生活 を読んでファンになったのですが、山口瞳さんを本当に好きになったのは、エッセーの中で、三島由紀夫さんを 『許せない、私は嫌いだ。』 と、罵倒した文章に出会ってからです。
勿論、三島さんが、存命中で文壇で重きを成している絶頂期ですから、驚きました。

山口瞳さんの怒っている文章は、概略次のようなことだったと思います。

『自分がすし屋に行ったら、三島氏もそのすし屋に来た。離れた席だけれど何となく見ていたら、三島氏は、鮪のトロを美味しい美味しいと言って、30個(?)近く、在庫がなくなるまで食べ尽くした。
貝や他のネタだったら、今日はもう終わりましたといって、他のお客にあやまっても済むけれど、鮪を切らしたら、すし屋はその日は店を閉めなければいけないじゃないか。
店のことも考えずに、自分勝手な気配りのない人だ。』 という主旨だったと思います。

文壇の重鎮にこんなことで怒るというのは、他にも多分言いたいことがあったのだろうけれど、これ程小さくシンプルな理由で、非難するというのは、可愛くて、クスッと笑えていいですよね。

私は、そんな1人の町人としての生き方を、山口瞳さんの沢山の身辺雑記から学んだような気がしています。(三島さんとトロの話の載っている作品を探したのですが、見つかりませんでした。不正確だったらお許しください。)