テレビ番組をブロードバンド配信することのややこしさについて no.2

昨日の続き


・・・で何で交渉がそんなに複雑なのかというと、放送番組は放送利用のみを 前提に作られていて、制作時点では、通常二次利用は想定されていません。

その結果、放送番組には、二次利用が簡単にできない要素が含まれています。

例えば、TVドラマのクリスマスディナーの場面で、ビング・クロスビー、ワム、山下達郎・・・等々のクリマスソングが次々と流れているとします。

TVドラマの制作者は、これ等の曲の作詞家、作曲家、歌手、レコード会社・・・等々に 『この曲の入った、レコードを使わせて下さい。』 と許可を求めずに、使うことができます。

著作権法上、放送に対しては公共性が非常に高いから、使い勝手が良いように優遇しているのです。

しかし、このTVドラマの評判がよくて、DVDにしたい、あるいはネットで流したいといったことになると、放送ではないので、著作権法の別の規定が適用されます。

つまり、音楽の著作権に関わる全ての人の許可を得なければならないし、誰にいくら支払うかどうか、算定基準をその都度作って、支払わなければならないことになっています。


著作権に関わる人というのは、音楽だけではありません。

原作者、脚本、シナリオに関わっている人がいます。

出演者 (俳優女優) がいます。

この人達全てに、放送番組ではないので、もう一度ゼロからスタートして交渉をしなければならないのです。


インターネットは日々進化しているので、放送番組をブロード・バンドで配信できる環境を早めに作っておこうと関係者は考えて、経団連に 『ブロードバンドコンテンツ流通研究会』 を2002年に作りました。

放送番組の二次使用をする時、関係者が毎回一から交渉を始めなくてもいい枠組みを作ろうということです。

でも、昨日も書きましたが、権利者側6団体、利用者側9団体、計15団体の交渉はとても難しかったようです。

今年、2005年3月に、ともかく暫定的な枠組みが、100回を超える会議と交渉を経てできたのは良かったのですが、文化庁著作権課課長、甲野正道さんの講演によれば、現時点 (2005年11月21日) 現在で適用された例はまだないそうです。


せっかく苦労して作った枠組みなのに、それを利用していないのは何故なのでしょうか?


(続く)