アーティストは良い客を欲する
沖縄の友人の奥さんが沖縄市 (コザ) で奥さんの友人の経営しているレストランを手伝っていました。
彼女はもともと創作料理家です。
私の友人によれば彼女が最近チョット元気がないらしいのです。
私は理由がなんとなくわかるような気がします。
料理家というのはアーティストです。
アーティストは料理家であれ、画家であれ、音楽家であれ、作家であれ、理解してくれる客を欲します。
良い客に恵まれないアーティストは元気を失います。
芸術至上主義で、理解者がいなくても、我が道を突き進むことの出来るアーティストは稀です。
いや、1人もいないといってもいいでしょう。
客がいなければ、まず生活できませんから。
創作料理家の彼女は、沖縄市 (コザ) で良い客にめぐり合っていないのだと思います。
私は自分では味にうるさい方だと思っています。
でもグルメではありません。
最近のグルメ本を見て、あちらの店、こちらの店をウロウロ徘徊する風潮をハッキリ言って苦々しく思っている者です。
私は自分の気に入る店をまず自分の住まいの周辺ほぼ半径300m以内で捜します。
町内は大事にしなければいけません。
同じように職場の半径300m以内の町内のお店をチェックします。
その次に職場と自分の住まいを結ぶ線の途中のお店を捜します。
この三つの条件からはずれるお店はほとんど対象外となります。
こうして私のいきつけの店のエリアは大体決まります。
客として認識してもらうには、客のほうも努力しなければなりません。
一番簡単なのは2〜3回続けて行ってみることです。
3回目ぐらいで 『アッ、また来てくれた!』 という何気ない表情の変化があればとりあえず合格です。
続けて行くには身近な所にある店か、自宅と職場の中間にないと難しいんです。
しょっちゅう行くようになれば、その日の料理の出来、不出来が判ります。
いつもと同じようにおいしかったら 『おいしかったよ』 の一言を残して店を出ます。
いつもと違う感じだったら、遠慮気味に 『ちょっといつもと違っていたよ』 と言います。
この遠慮気味というところが大事です。 偉そうな感じはいけません。
こんな風に感想を言えるのはチョクチョク顔を出している客の特権です。
そのお店のレベルが下がってしまっては、こちらも困りますから。感想を出来るだけ言うようにしています。
こんなことを言う意味のある相手は、オーナー兼店長とか、オーナー兼料理人です。
単なる従業員に言っても何の役にもたちません。
お客の意見が料理人迄届くわけがないからです。
そうなると、その店にオーナーはいつもいてもらわなければならないことになります。
そうなんです、オーナーはいつも店に居てほしいのです。
ですから、支店展開をしている店は、リストから外す方が無難です。
料理家はアーティストです。
アーティストは代理がききません。
評判のいいバンドが支店バンドを作ったっていう話しがありますか?(笑)
このたとえには無理がある気もしますが、何となくわかっていただければうれしいです。
良い音楽を演奏するミュージシャンや、良い料理を作る料理家は、良い結果を出した時に拍手してくれる客を欲するのです。