僕らの先生はラグビー怪獣

私は「近過去」に自分がどうして興味を持つのだろうと自問自答します。


大学に入学するまで「鳴くよ うぐいす 平安京、平安遷都は794年」などと一生懸命
年号を覚えていた記憶しかありませんから、「近過去」に興味がでてきたのは 社会人に
なってからです。

私の祖母は私が高校2年の夏に亡くなりました。
祖母は慶応3年生まれですから 江戸時代生まれになります。
私のまわりにいる若い女の子にこのことを話すと、皆一様に仰天します。
「幕末、明治維新」と「関が原の戦い」とが彼女達からみると、殆ど同時期に思えて
しまうのでしょう。


祖母は私の家族の近くで生活していましたから、中学生、高校生の時に昔話をちょくちょく
話してくれました。
でも その頃の私には過去のことに興味がありませんから せっかくの話しを何も覚えて
いないのは残念なことです。


若者は「近未来」あるいは将来にしか興味がなく「近過去」に学ぶことがあるとも思いません。


大学に入って「経済史」とか「○○史」といった課目毎に講義の冒頭は その課目の
歴史から入るのが常です。
「成程。世の中のあらゆることに歴史があって それをベースに今があるのだ。」
と、大学の講座で たったこれだけを納得して卒業しました。(笑)


「自分がどう生きようとするのか」と若い人は一様に悩みます。
「自分が今このように生きているのは何を根拠にしているのか」などと考えちゃいます。
今の自分自身を肯定するにしろ否定するにしろ 何で「今」自分がこうなってしまった
のかを知るには 「今の前」を見なければなりません。
その「今の前」になったのを知るには 「今の前の前」を見なければなりません。
そして「今の前の前の前」はどうだったんだろう・・・・・・。
で、私のことなど誰もかまってくれないし 解説もしてくれませんから、自分自身で
過去に遡らなければならなくなります。


まあ そんなわけで私は「近過去」に興味がでてきたのだろうと思うのです。



私が集英社の読書情報誌『青春と読書』 を毎月読んでいることは

前に書きました。

この情報誌に『ぼくらの先生はラグビー怪獣』という何ともけったいな

タイトルの小説が連載されています。3月号で『第8回』ですから

去年の8月から始まっています。

でも私としては去年の夏から秋にかけてmF247のスタート準備でバタバタしていて

こんな感じの小説を毎月読む気になれなくてほっておいたのです。

今年正月に少し落ち着いてきていて、テレビでは高校ラグビーも盛り上がっていて

『そういえば俺も昔ラグビーをやっていたよなあ!』と

思いながらぱらぱら雑誌をめくっていたら『ぼくらの先生はラグビー怪獣』

が目に飛び込んできました。

見開き2ページをサーッと見ると『パス』『スナップ』『ノックオン』『ランパス』

『ゴール』『オフェンス』『ディフェンス』等々

専門用語が見えます。

『タイトル』は何だかピンとこないけど読んでみようかということで

読み始めました。

『アレッ!ラグビーの説明がメチャクチャうまいな!』

『この作者はラグビーをやっていたんだろうか?』と

慌てて作者紹介を見ました。『上岡伸雄、学習院大学、文学部教授 訳書に E・アニー・ブルー『シッピングニュース』他』

ラグビーを自分でプレイしていたからどうかはわかりません。

まあそんなことはどうでもいいのです。

この小説の内容を 2月号までのあらすじから引用します。


【四月の始業式の朝、六年生になった加島治生(ぼく)の教室にはでっかい先生がやってきた。

新任の教師で名前は熊沢敦という。

大学時代はラグビー日本学生代表にも選ばれ、ファンからあっシーの愛称で親しまれていたが、

怪我をきっかけに引退。志をあらたに、ラグビーをおしえるために小学校の教師となったのだ。

アッシーの体育はラグビーばかり。国語の授業では宮沢賢治の詩の暗唱が続き、

生徒の父母は偏った勉強ばかりさせることに文句を言っている。

五月下旬からは、体育で試合形式のタッチラグビーを始めた。ある日、練習中に雨が振り出し、

治生たちはその場で習いたての『雨ニモマケズ』を大声で暗唱するのだった。】


およそこの小説のテーマはわかっていただけると思います。

作者 上岡伸雄 先生 は、明らかに『小学校の教育はこのようであって欲しい』

というおもいで書きはじめている小説だと思います。


またまた自分の話に戻ります。(スミマセン)

数日前に私は小学校時代の話を書きました。

担任の余川先生の名を記し友人の名も2名出しました。

あの文章から何となく、どれ程私が小学校時代を

幸せに過ごしていたかを汲み取っていただけたらうれしいのです。

で約50年前私の担任の余川先生はまさに

ラグビー怪獣 熊沢先生』だったのです。


この小説は連載が完結すればいずれ集英社から発売される筈です。

是非、読んでください。

そうそう、この小説を最初に読み始めた時に何となく

芦原すなお さん の『青春デンデケデケデケ

(この本は大林宣彦さんが映画化しましたよね。)

を思わせる何か懐かしさも感じさせてくれます。