クリエーター大国 その2

第1回目は、「デジタルコンテンツの振興戦略(課題と解決の方向)」の目標2:「クリエーター大国に向けた課題」というテーマに沿って「丸山参考人の考え方を述べよ」ということでした。
自分の話したことを簡単にまとめれば (従来型) 「クレイエーターの作るコンテンツ(作品)をユーザーに届けるには それなりの仕組みが必要で その仕組みを持っている企業(レコード会社、映画会社、放送局)が絶大な力を持っていたけれど、ブロードバンドが実現すれば「クリエーターの作るコンテンツ(作品)は直接ユーザーに届けることが可能になるのだから、その使い方の より良い方法を開発すれば クリエーターにとって 悲観的なことは何もない。」ということを述べました。

第2回目は 2005年12月1日の私と同日に参考人として呼ばれた ガイナックスの山賀さんの話を転載します。

山賀参考人 アニメ会社をやっております。今日は現場の人間として、参考人としてお話しするということで参りました。
 私自身、会社をやっていますし、いろいろアニメ以外にもゲームなども手がけていますけれども、一応、あまり話が広がってもしようがないので、アニメの現場という視点からだけお話しします。
 私が初めてアニメの現場に入ったのは、今から24〜25年前です。そのころアニメ業界というのは確かに今より小さかったです。でも、それなりに本数も増えてきて、アニメブームがちょうど起こっていたころです。「機動戦士ガンダム」というロボットアニメがヒットして、それからマーチャンダイジングで大変いろんな物が売れて、アニメは金になるというようなことが言われ始めたころでした。そのころ、確かにお金の再分配というものは大変不透明なもので、現場から見れば、そんなものはほとんど行われなかったと言ってもいいぐらいです。
 ただ、そんなのはわかり切った上で現場の人間というのは入ってきますから、そういう賃金体系なんだ。それは承知の上で一生を過ごしていますので、むしろ一個一個の単価の、例えば原画1枚書いたら幾らとか、1カット幾らであるとかそういうことの方にみんな関心が行っていました。
 ただ、そのころは、ある意味ナンセンスなんですけれども、学歴とか、あと年功序列とかというものがまだしっかりありました。例えば、美大を出ているとちょっと上乗せがあったり、あと高卒、中卒で入ってきた人間は何となく待遇が低かったり、それはやっているうちにだんだん是正されるんですけれども。あと、それと同時に年功序列というのがやはりありました。例えば、テレビシリーズの監督になるのにはやはり30代でもまだ早い。劇場アニメの監督をやるといったら40代だろう。実際、宮崎駿さんもたしか30代の半ばぐらいで初めて監督をやられていると思います。
 実は、それを蹴飛ばしたのは私たちなんですけれども、そういうものがあまりにも理不尽である。才能がなくても年齢が上がっていけばいいポストが与えられてお金が入ってくる。才能があって若い人間というのもいるんですけれども、大変安い給料でやっている。それは理不尽であるということで、自分たちでまず会社をつくって、直接スポンサーと交渉する形を取って、それを崩してしまったんですけれども、一遍それが崩れると、当たり前ですけれども、もともと理不尽だというものがあったものですから、簡単にいってしまうと収拾がつかない状態になったわけです。年功序列とかそういうヒエラルキーの面から見た場合です。そうなってくると、結局、年寄りも若い者も同じ土俵で闘うしかなくなってしまうわけです。
 当たり前ですけれども、アニメの分野で若い連中に勝つのはなかなか難しいです。勿論、全然そんな泣き言を言っているわけではないんですけれども、ただ、そういうふうになってくると、やはり一生の仕事としてやっていく上で、どうしても世間一般の年功序列的な、30代になったらこれぐらいの収入があった方がいい、40代になったらこれぐらいの収入が欲しいという世界からはどうしても、取り残されているわけではないんですけれども、取り残された感触を、多分、現場の人は持っていると思います。
 でも、これはその人の能力の質を決める方法というのは大変難しくて、昔はスポンサー自体が大変少なかったものですから、スポンサーの側から決めていったんです。誰々さんはまだまだ劇場アニメなどやるような人ではない。誰々さんは、そろそろやってみたらどうだ。これはスポンサー側から与えていったヒエラルキーだったんですけれども、これ自体も実際のところ、スポンサーというものが大変細かく林立するようになりまして、実際、弊社も少しスポンサーの仲間入りをさせてもらっていたりするぐらいですから、現場のスポンサーというのもあるぐらいですから、そうなってくると、スポンサーから与えられるヒエラルキーもなくなっていくわけです。
 要するに、もともと入ってくるお金がどうであるかという以前に、その再分配というのが大変難しい問題としてありまして、結局、ピラミッド構造をどうつくっていくかというのは、私の個人的な課題にはなっています。
 業界としても、例えば、今、日本のアニメ業界で一番は誰だといったら、宮崎駿で、それはいいでしょう。多分、あまり文句を言う人はいないと思うんですけれども、宮崎駿がトップだとしても、実際のところは中間層という、あのぐらいの中間にもうけていたら、家の1件や2件建てられるという中間層があまりないんです。1個成功した人がいる。あとは平たく、みんなアパート住まい。そんなものなんです。そこのところが少し、簡単に言ってしまうと、私どものような位置がもう少し充実しないと。これは自分自身の課題なんですけれども。

○牛尾座長 なぜなんですか。

○山賀参考人 なぜなんでしょう。結局のところは、ヒットというのが単発で発生するからなんです。だって、ヒットメーカーがずっとヒットを出し続けるケースというのはまずほとんどないわけです。これは弊社にとってもそうです。
 ところが、宮崎駿という人は、そのヒットをずっと積み上げていって、自分のブランドをつくったわけです。そうしたら、実はアニメ業界と関係ないわけです。宮崎駿という業界があるだけですから。そうなると、そこにはヒエラルキーというものは存在しないわけです。そういう中で、自分としてはもう少し、なぜだと言われて答えられないように、実はまだまだ課題として持っているものなんですけれども。

中略

山賀さんの話のなかにソフトビジネスの難しさを現す事象が沢山詰まっています。
とりわけ最後の部分「ヒットメーカーがずっとヒットを出し続けるケースというのは まずほとんどないわけです。」という個所と「宮崎駿という人はアニメ業界とは関係ない。宮崎駿という業界があるだけだ。」という個所は実に考えさせられます。(続く)