クリエーター大国 その3

山賀さんの話の続きです。

牛尾座長 こういうところがつくった作品を評価する主体というのは、どこにあるんですか。例えば、宮崎さんはいいぞということを評価する人はだれなんですか。

○山賀参考人 結局、売れたやつが勝ちという、何本売れたのか、あるいは何本出たのかというのは常に話されていて。

○牛尾座長 売れたものがいいということですね。

○山賀参考人 そうですね。視聴率はあまり言われません。結局、DVDの本数、初回何本出たかというのは毎回話題になります。誰か、とにかくほかの会社の人に会ったら、あれ何本ぐらい出たのというのは必ず言います。
 だから、さっきも言いましたように、ヒエラルキーが消えてしまっているので、ステータスというのはそれぞれ持っているので、誰が偉くて、誰が偉くないのかがよくわからないんです。ただ、本数だけは数字ではっきり出ますから。

○牛尾座長 山賀さんがやったやつは、割とよく売れるぞというようなレピュテーションというのはあるでしょう。

○山賀参考人 イメージですね。それはわかりません。つくって、それがどのぐらい、またどういう環境でつくって、どういうターゲットを狙ってつくってというのは毎回違いますから、これはわかりません。
 私の方からは、そんなところなんですが、すみません。

○牛尾座長 だけれども、丸山さんがおっしゃったような、ユーザー側とか、ユーザーとの間に入るとかそういうような話は、この世界にはないわけですね。要するに、インターネットになった場合には直接に行けるようになったとか。

○丸山参考人 まだないでしょうけれども、多分、さっき言ったように、ヒエラルキーがないという世界で、山賀さんに対して不満を持っている山賀さんの部下がいたとします。山賀さんがOKしないとつくらせてくれない。そうしたら、どこかでそれをこつこつ自分でやって、今までですと多分、例えば放送局の決まった30分枠の中で、それもシリーズでつくらないと、作品というのはつくっても意味がないんですが、今度ブロードバンドになれば、たとえ7分でも、4分でも、尺は関係なくなりますから、勝手につくって、そこのところにきらりと光るものをつくったら、親分の山賀を追い抜けるぞという期待といいますか、野心を持っているのはこちらの下にたくさんいると思うんです。
 だから、音楽は明らかにそこになっていますから、ひっくり返してやろうというやつがどんどん出てきているわけで、だから、それが多分、アニメーションの世界にも来るだろうし、実写の世界にも来ると思うんです。

○山賀参考人 実際、アニメーションの世界は、今、資金がだぶついている状態になっていまして、インターネットの時代を待たずして、そのような現象は実際に起きています。 昔はアニメーターなどが企画を考えるわけです。毎日毎日絵を描いているだけのアニメーターが、私はこんなファンタジーがやりたいんだと、大体、寝ぼけたような企画書を書いたりするんですけれども、それは通らなかったんです。それはまず、スポンサーの段階でシャットアウトされてしまうし、放送局にも上がっていかないんです。それでシャットアウトされていたんですけれども、今は、昔だったらこんな企画は絶対通らないと思うような企画が普通にテレビシリーズとして通っています。それだから、テレビシリーズの数が増えているんです。

○牛尾座長 発表する場面も増えていますしね。ブロードバンドでどんどん増えてくるから。

○山賀参考人 ただ、それでやはり問題が起きています。粗製濫造になってしまうんです。

○角川本部員 テレビ局は、以前は、大体週に40本のアニメ番組を放映していたんです。

○丸山参考人 番組が40本もあるんです。

○角川本部員 それが、今、山賀さんのお話のように、週に100 本出るようになったんです。

○山賀参考人 毎週毎週、どこかで100 人の監督が100 人の主役に対して、もしくは100 人のサブアクトに対して打ち合わせをしたり、レコーディングをしたり、それが毎週毎週あるわけです。

○牛尾会長 だけれども、これは言葉だけ変えれば、最終的にはグローバルなマーケットに登場するわけでしょう。

○丸山参考人 いけるものもあるし。

○山賀参考人 いえ、ほとんどいけないです。
 名前は伏せますけれども、日本のアニメを売っているアメリカの会社が大量に在庫を抱え過ぎて、倒れそうになったことがついこの間ありました。それは、私の目から見て、もう少し目ききを置いて、ちゃんと選んで物を仕入れないと、幾ら倉庫がでかかろうが何だろうが、これだけの在庫を抱えてはまずいでしょうというようなものでした

山賀さんの話のなかで、日本のアニメーションの制作の現場の現状は随分良くわかります。
でも もうひとつわからないのは 過去週に40本のアニメの番組を放映していたのが、今は週に100本放映しているというのは
アニメーションを見る人の数が以前より増えたのでしょうか?いったい映像の世界に何かが起こっているのでしょうか?
現場は待遇が悪いといいながら アニメーションの世界は 今、資金がだぶついているのだそうで、粗製濫造になってしまっていると 山賀さんは言っています。
アニメーションの制作現場は過去のヒエラルキーは消えてしまって それに代わる新しい方向性というのは まだ全く見えてないみたいですね。
音楽の世界は ブロードバンドと配信の問題が現実に目の前にあり、CDの売り上げが下がって その状況の対応をどうするかで騒いでいるのですが、アニメーションの世界は DVDの売り上げが全体として伸びているのだから ブロードバンドの配信問題より もっと緊急に解決しなければならないことがあるということなのでしょうか?(続く)