逆やまびこ現象 1

新聞は読者を必要とします。ですから読者の喜ぶ記事を書きます。
TVは視聴者を必要とします。ですから視聴者の喜ぶ番組を制作します。  
サッカー ワールドカップのはじまる前を思い出すと、新聞の読者、TVの視聴者の全てが日本代表の一次リーグ突破を願っていましたから、新聞もTVも一次リーグ突破は困難だとは決して言いませんでした。 むしろ可能性が高い という根拠無き予想が溢れていました。なぜならそういう記事や番組を作らなければ読者や視聴者が、満足しないからです。日本代表選手のヨイショインタビューや特集が大量に流布され読者や視聴者はそれを読んだり見たりしているうちに 一次リーグ突破が可能ではないかと考えてしまいました。

取材された選手や関係者は どのように書かれたか あるいは番組が作られたか をチェックする為に注意深く読んだり、見たりします。 ヨイショ記事や番組ですから 全てが美化されていて、等身大よりはるかに優れた代表チームとして描かれています。代表選手も世界的レベルの選手ということになっていました。

当の代表選手が ヨイショされた記事や番組を読んだり見たりしているうちに 影響されて「もしかしたら自分は世界的レベルなのかもしれない」と思いはじめ「自分は世界レベルなのだ。」と確信してしまう という勘違いをしてしまったのではないかと思うのです。

こういう一連の現象を 私は「逆やまびこ現象」あるいは「逆やまびこ効果」と名付けています。
静かな山道を歩いていて見晴らしのいい場所に到達すると 登山者は「ヤッホー!」と大声で叫びます。その声はほんの1〜2秒後に 反対側の斜面から反射してきて かすかに「ヤッホー!」という自分の声が戻ってくる「やまびこ」現象を誰もが知っています。 「ヤッホー!」と叫んだら10倍以上の大音量で「ヤッホー!」という声が戻ってきて 叫んだ登山者がビックリしてコケルというのはよくある古典的TVギャグです。 反射した「ヤッホー!」が大音量で戻ってきて「ビックリ」するのが正常で、だからこそ「ギャグ」になるのですが、それを当然のことのように感じたら「異常」であり「悲劇」になってしまいます。

「逆やまびこ現象」あるいは「逆やまびこ効果」というのは「ヤッホー!」という戻ってきた声が本来は減衰していなければおかしいと思わなければならないにもかかわらず、増大して戻ってきても変だなと考えずに当然だと思ってしまう現象を指します。(笑)