逆やまびこ現象 その2

「逆やまびこ現象」はビジネスの世界にも数多く見ることができます。
文芸春秋8月号の東谷暁(ひがしたに さとし)氏の文章のなかに
「逆やまびこ現象」の典型例があるので御紹介します。

・・・・・一時は世界第2位にまで登りつめた情報通信会社ワールドコムは ITバブルの際に
情報通信量が 短期間に 倍々ゲームで伸びることを 盛んに宣伝した。
ところが その宣伝コピーが ITバブル期に発表された 米商務省のリポート「デジタルエコノミーの誕生」に引用された。(中略)
「インターネットの情報通信量は 100日で2倍になる」という宣伝コピーは その後
ワールドコムの宣伝コピーとしてだけでなく、商務省のお墨付きが付いた ということで、ワールドコムの 経営戦略の根拠になってしまった。
その結果どうなったか。
野放図な光ファイバーの敷設を行い、過剰投資によって、2002年破綻に至ったのである。

ここにあるのは、取材される側が「こうなればいいなぁ」
とか「こうあるべきだ」という、いわば願望を口にすると
取材する側は若干ニュアンスを変えて「こうできる」「こうなる」
と記事にし番組にしがちです。それを取材された側が
読んだり見たりすると「あ、あの権威のある官庁やマスコミが自分の
願望を承認してくれたのだから、自分の願望は
実現可能である。」と考えてしまうのでしょう。
そして、次の段階で取材される側は
「こうできる」「こうなる」と発言しはじめます。
自分の願望を根拠にした「やまびこ」が大音量で戻ってくれば
「願望」は「確信」となります。

「逆やまびこ現象」は最近のビジネスの世界で特に目立ちます。