江戸時代文化のはなし 2

江戸時代に興味をもちはじめたのは、経済や社会が停滞していた江戸時代に どうして「文化」だけが発展したのだろうか、という疑問を解明すれば、「閉塞感のある現在の音楽業界の答えがみつかるかもしれない。」と思ったからです。
・・で、高校生用の日本史の年表を購入して、その年表をじっくり眺めることからはじめました。(笑)
年表を見ているだけで、つぎつぎに色んなことが見えてきます。
そんなわけで「江戸の公共事業」とか「徳川綱吉の生類憐れみの令 新解釈」を書き始めたのですが、私の友人がソッと 1冊の本をプレゼントしてくれました。
脇本祐一著「豪商たちの時代」−徳川三百年は「あきんど」が創ったー日本経済新聞社 です。
私のもっている「江戸時代」のイメージは 「狸親父の徳川家康が、豊臣秀吉の死後 高度な政治力を駆使して政権を奪い、全国の大名を脅し上げ、妻子を江戸に人質として住まわせ、参勤交代の出費によって 大名の経済力を弱体化させ、江戸幕府の 将軍を頂点とする士農工商身分制度を確立し、農民は常に飢餓線上に置かれ、鎖国によって世界の進歩から取り残されてしまった 暗い停滞していた時代」です。
ところが、「豪商たちの時代」を読むと「江戸時代」は私が思っていた江戸時代のイメージと大きく異なる時代であったことがわかりました。
で、あわてて「江戸時代」に関する本を次々と購入し、読んだのですが、どの本も江戸時代のイメージは私のもっていたイメージと違うのです。
「経済や社会が停滞していた江戸時代」という前提がどうも間違っていたようなのです。
私の 間違いを正してくれた「豪商たちの時代」をプレゼントしてくれた友人に お礼を申し上げます。
ここで 私はとても不思議な感じを持ちました。「どうして私は江戸時代を 経済や社会が停滞していた暗い時代だったと思い込んでいたのだろうか?」 中学高校の日本史の授業が そんな風に誘導したとも思えないし・・と考えているうちに 「ああ多分TV番組の影響だな。」と気付きました。 TV放送が日本で始まって以来 おびただしい数の時代劇がTV番組で放映されました。 時代劇は必ず江戸時代です。 NHKの大河ドラマは、源義経北条時宗といった鎌倉時代や信長秀吉といった時代をとりあげることがありますが、民放の時代劇の時代設定は100%江戸時代で、悪い家老が悪い上級武士と大商店の悪い旦那と組んで 庶民である町人や農民をいじめるという毎度同じ筋立てで、水戸黄門や、桃太郎侍や、暴れん坊将軍や、大岡越前守、といった由緒正しい主人公が身分を隠しながら悪を正すということになっています。ドラマの都合で庶民は必ず悲惨な境遇である必要があり、悪い家老や上級武士だけは、やたら贅沢な生活をしています。
この両者の対比を何百回も見てしまった私は「江戸時代を 経済や社会が停滞した暗い時代であった。」と思い込んでしまったらしいのです。(笑)
これって「団塊の世代」が「アメリカ制作のホームドラマ」を見て「バーチャルのアメリカンカルチャー」を「リアルなアメリカンカルチャー」だと錯覚してしまって 「アメリカ大好き」になってしまった構図と全く同じなんですよね。(笑)